中小企業診断士を目指すブログ

中小企業診断士受験生の備忘録です。あと日々の雑記など。

組織形態(静的組織論と動的組織論)

1.静的組織論

(1)通常のライン課のメリットは各部門での習熟度が早まり成果をあげやすくなること。営業は営業、経理経理の方が仕事をさばくのに適している。デメリットはセクショナリズムの発生と経営層の負担増、次世代のトップマネジメントの育成が難しいこと。

(2)官僚制は合理的で公式化された権威のある組織のこと。官僚制の負の側面は官僚制の逆機能と呼ばれる。

(3)事業部別組織は1990年代頃に流行した。権限をトップマネジメントから各事業部の事業部長に権限移譲(デリゲート)させている。各事業部はトップマネジメントに対する損益責任(P/L)上の責任を負うためプロフィット・センターと呼ばれるが、事業部別組織は貸借対照表(B/S)上の責任を負わない。事業部制のメリットは経営者候補の育成、デメリットは複数の事業部にまたがる開発や事業再編の困難性があげられる。デュポン型組織と呼ばれる。

 

ところでプロフィット・センターはコスト・センターとの対義でよくビジネスでも用いられるが、意味がいまひとつ曖昧だと思う。みな当然のように「組織はプロフィット・センターであるべきで、コスト・センターであるべきではない」と言うが、日本語として意味がわからない。Googleでプロフィット・センターを調べると「A profit center is a branch or division of a company that directly adds or is expected to add to the entire organization's bottom line. It is treated as a separate, standalone business, responsible for generating its revenues and earnings. Its profits and losses are calculated separately from other areas of the business. Peter Drucker coined the term "profit center" in 1945.」と出てくる。なるほどこの定義によると「事業部」はまさしくプロフィット・センターである。

 

対してコスト・センターは「A cost center is a department or function within an organization that does not directly add to profit but still costs the organization money to operate. Cost centers only contribute to a company's profitability indirectly, unlike a profit center, which contributes to profitability directly through its actions. Managers of cost centers, such as human resources and accounting departments are responsible for keeping their costs in line or below budget.」と定義される。

 

なるほど人事部門や経理部門などがコスト・センターなわけだ。わかりやすい。プロフィット・センターとコスト・センターは意味的には優劣を定義していない。では、なぜみんな「組織はプロフィット・センターであるべきで、コスト・センターであるべきではない」などと宣うのだろうか。このあたりは原典(ドラッカーか?)にあたらないと判断がつかないのでそのうち調べてみたい。

 

(4)カンパニー制度はこれも90年代にはやった気がする。あらゆる企業が導入したが、自分の知っている会社でKHIやFHI、NGKなどがおもいあたる。事業部制組織を独立会社に近づけた組織形態だが、社内資本金(社内資本金制度は、会社の資本金を各事業部に配賦する制度。 各事業部に貸借対照表(B/S)も配賦することによって、損益だけでなく、投入した資本あるいは資産に対する利益率も重視させることを目的とする。)を有しており、B/S上の責任を有する。インベストメント・センターらしい。

 

インベストメント・センターの定義はGoogleで検索すると「An investment center is a business unit in a firm that can utilize capital to contribute directly to a company's profitability. Companies evaluate the performance of an investment center according to the revenues it brings in through investments in capital assets compared to the overall expenses」と出てくる。なるほどB/S上の責任を負うという定義とよくマッチする。インベストメント・センターのInvestmentはこの意味で独立投下資本であるから、事業部制よりも迅速な意思決定を行うことができるとされる。その反面、蛸壷化すると、事業分野の細分化が起きるので競争力が低下しやすいというデメリットがある。

 

2.動的組織論

(1)ここはいわゆる静的組織(固定的なライン課)に対して、動的な組織であるのでプロジェクトチームやタスクフォースのことと考えればよい。ちなみに自分の勤め先(製造業)ではWG(ワーキンググループ)と呼ぶが、妻の勤め先(銀行業)ではWT(ワーキングチーム)と呼ぶらしい。最初は「うちの会社に新しいWT(ダブルティー)ができてね」と言われてわけがわからなかった。会社や業界によって呼び名が違うのはおもしろい。

(2)マトリックス組織とは静的組織と動的組織の混合型組織のことで、機能マネージャーと事業マネージャーが存在する2ボス制度のことであり、トップ・マネジメントの情報処理も軽減される理想形とされる。環境の早い変化に対応できるメリットがあるが、非関連事業ではなく、関連事業に多角化した企業に適しているとされる。個人的には、この観点はおもしろいと思うが、中小企業で「関連事業に多角化した業態」というのは少し想像しにくい。

 

個人的な経験でいえば、DoRの曖昧な日本企業にマトリックス組織はなじまないのではないかと思っている。だいたい滅茶苦茶になるので、中小企業診断士の教科書が述べるようにマトリックス型組織には「静的組織と動的組織の矛盾を創造的に解決できるような企業文化」が必要だろう。うちの会社の場合はこれは管理職研修でよく教えられるので、ライン課のマネージャーは「(PM(プロジェクトマネージャー)の苦労)を押して図るべし」の精神でPM(プロジェクトマネージャー)の邪魔をしないようにある程度、部下を自由にさせている。